第4章 ジンベエザメの試練 ふたたび
「はい、どうぞ。暑いからどうかなって思ったけど、カップケーキにはホットコーヒーの方が合うかなーって」
「おお、サンキュ」
リビングは冷房が効いていたので、ホットコーヒーでも十分なぐらいだった。
「宗介さん、お砂糖とミルク何個ずつですか?」
「いや、俺はいらねえ」
「えぇ?!すごい、大人ですね!」
ヒカリの言い方に思わず噴き出してしまう。
「はっ・・・・・・ガキ」
「ガ、ガキじゃないっ!・・・う〜〜、いいですよ、どうせまだ15だもん・・・」
ヒカリの言葉でふと思い出した。そういや俺はこいつの誕生日をまだ聞いていない。お前の時はちゃんと祝ってやるなんて言ったのに、知らずに過ぎてしまったらこの前みたいなことになっちまう。
「そういやお前、誕生日っていつ・・・」
「あ!DVD観ますよね?今、セットします」
だけど、聞こうと思ったらヒカリはパッと立ち上がりテレビの方へと行ってしまった。まあ後で聞くか、などと思っているととんでもない物が俺の目に入ってきた。
「えーっと、どこだったかなあ・・・ここかなあ・・・」
四つん這いになって、テレビの下の棚を漁ってるもんだから、ヒカリの短い制服のスカートの中が見えちまいそうだった。
慌てて目をそらす。
・・・今度こいつにスカートをもっと長くしろと言った方がいいかもしれない。そうだ、普段から短すぎるんだよ、こいつは。膝上何センチにしてんだ、バカ。そんな短くしてるから、転んだ時に見えたりするんだ。
あー・・・そういや俺、こいつの一回見たことあったんだわ、などと今になって思い出す。いちご・・・だったよな、あん時は。まああれから俺達の関係が始まったわけだが、今はそんなことはどうでもいい。
あん時とでは、見えちまった時の意味が違うわけで・・・
とりあえず、もうなんでもいいから早くしろと願いながら、俺はひたすらヒカリから視線をそらし続けた。