第3章 Happy Birthday!
寮を出てヒカリに電話すると、まださっきの場所の近くにいるとのことだった。当然まだ不機嫌そうな声のヒカリをなんとか説き伏せて、駅前で落ち合うことにした。
「ヒカリ」
「・・・」
俺が到着すると、もうすでにヒカリは来ていた。ヒカリは俺の姿を見つけると、ぷいと横を向いて視線をそらした。
「お前・・・まだいたんだな。帰っちまったと思ってた」
「・・・宗介さんに今日中に何かプレゼントしたくて、色々探してました・・・」
「・・・そうか」
「・・・でも・・・まだ私、宗介さんのことあんまり知らないし・・・何あげたら喜んでくれるのかわかんなくって・・・」
顔はよく見えないが、その声だけでヒカリが少し泣きそうになっているのがわかった。頭を撫でてやろうとしたが、そういえばこいつ、撫でてやった方が泣いちまうんだっけな、などと思い出し慌てて出しかけた手を引っ込めた。
「別に・・・何もいらねえって言ってんだろ。俺は・・・俺はもう・・・ヒカリとこういう関係になれてるだけで、十分・・・っつーか・・・」
・・・くそ、何言ってんだ俺は。だけど、やっとヒカリが俺の方を向いてくれた。
「・・・だから、何もいらねえんだよ・・・わかったかよ」
最後の方は、どっちが怒ってるんだかわからないような口調になってしまった。ヒカリの瞳がまっすぐに俺を見上げてくる。
「・・・まあ、来年からはその・・・頼むわ。あと・・・お前の時は、俺がちゃんと祝ってやるから・・・それでいいだろ。だからもう機嫌なおせ・・・な?」
「っん・・・・・・ふふふ、はい」
もう大丈夫そうなことを確認してから、少しだけ乱暴に頭を撫でてやると、ヒカリはくすぐったそうな顔をして笑った。