第2章 ジンベエザメの試練
黙々と問題を解くヒカリの横顔を見ながら思う。
・・・自分の欲望のままに動いたとしても、ヒカリはきっと俺を受け入れてくれたと思う。それは思い上がりでもなんでもなく、きっとそうだったと思う。
でも・・・それは嫌だった。俺の隣で無防備な格好をして、数学の問題と格闘してるちっこいこの女は、多分何もわかってない。
・・・・・・さすがに、どうすればガキができるのかがわからないほど、無知ではないだろうが、何にしても経験値が低すぎる。それは、俺とのぎこちないキスからでも十分わかった。
そんなヒカリを相手に、性急に事を進めて、怖がらせたりするのは嫌だった。
・・・・・・まあ、それでも俺も男だから、いつまでも気長に待ってやることはできない、と思う。だけど、できる限りヒカリのペースに合わせてやりたかった。できる限り・・・大事にしてやりたかった。
「・・・あ、あの、宗介さん」
「ん?どっかわかんねえのか?」
ぼんやりと考え事をしていたのがいけなかった。
なんとなくヒカリの声が甘えるようなトーンになってることに、俺はここで気付かないといけなかったんだと思う。
「・・・・・・あの・・・ぜ、全部できたらごほうびに・・・ぎゅーって、してもらいたいです・・・ダメ、ですか?」
ぎゅっとヒカリの小さな手が、俺のシャツを掴んできた。頬はピンク色で、少し潤んだ瞳が俺を上目遣いに見つめてくる。
「・・・ヒカリ」
身体が自然に動いていた。俺の手がヒカリの上気した頬に触れる。ビクリとヒカリが少しだけ震えた。
・・・そんなの・・・今すぐしてえ。ぎゅーだけじゃなくて、その先もずっと。今日、どんだけ俺が我慢したと思ってるんだ。
・・・・・・ダメだな、俺。さっき大事にしてえなんて言ったくせに。
・・・でもヒカリのこんな顔見ちまったら、もう無理だ。
「そう・・・すけさん?」
「・・・・・・ヒカリ」