第2章 ジンベエザメの試練
「・・・マジかよ」
ヒカリの家を目の前にして、俺は昨日から何度目になるかわからない『マジかよ』を呟いた。
きっかけは昨日のヒカリとの電話だった。夏休みももう残りわずかだ。そういえば花火大会の時にヒカリが数学の課題がちょっと・・・と言っていたような気がしたので、俺は軽い気持ちでもうできたのか聞いてみた。
『あは・・・は・・・夏休みの課題ができなかったからって留年、とかありますかね・・・』
ヒカリの返事は俺の予想の斜め上を行くものだった。
「は?まだ終わってねえのか?あとどれぐらい残ってんだ」
『2割・・・』
「ああ、それぐらいなら・・・」
『・・・は終わってますかね』
「8割できてねえのかよ!」
思わずでかい声を出してしまっていた。留年はさすがにないだろうが、2割しかできてないのはまずいだろう。
『だって、もうなにがなんだか・・・』
「あー・・・わかった。俺が教えてやる」
『・・・へ?そ、宗介さん、教えられるんですか?』
「いや、俺一応3年だからな・・・それに、まあ数学なら割と得意だ」
『す、すごい・・・!私、ホント、数学はさっぱりで・・・』
正直他の奴だったら面倒くせえって突き放すところだったが、他でもない、ヒカリが困っているので助けてやることにした。時間はあまりないが、1年の問題だし、そう手間もかからないだろう。
「あー・・・で、場所どうする?さすがに寮に女入れるわけにはいかねえし、どっか適当にファミレスでも・・・」
『あ、だったらうちはどうですか?』
「お前んち?いや・・・でもよ・・・」
正直まだヒカリの家に行くには抵抗があった。確かに、少しぐらいは親に挨拶しといた方がいいのかもしれないが、まだ早いというか、俺の方も色々心の準備がいるというか・・・
『あ、大丈夫ですよ。うち、両親遅くまで帰ってきませんから』
「・・・・・・・・・マジかよ」