第21章 すてっぷあっぷ? その1
「・・・38度5分・・・・・・」
体温計に表示された数字を見て、絶望的な気分になる。
・・・最悪だ。どうして私はこんな大事な時に風邪なんてひいてしまうんだろう。風邪なんて普段めったにひかないのに。
「身体痛い・・・頭痛い・・・」
そう弱音を吐いてみても、誰も返事をしてくれない。お父さんもお母さんも朝から仕事で、家には誰もいない。それはもうずっと前から慣れっこだけど、やっぱりこんな時はさみしい。誰かに側にいてほしいと思ってしまう。
「・・・はぁ・・・寝よ・・・」
こんな時にできることなんて、なるべく安静にしてることぐらいしかない。幸い期末は昨日で終わったし・・・・・・・・・そう。だからこそ最悪なんだ。せっかく昨日天方先生に話を聞いてもらって、気持ちの整理がついて、イヴに向けてよし頑張るぞって思ったところだったのに・・・服とか下着とか新しいの買いに行きたかったし、宗介さんへのクリスマスプレゼントだって選びに行きたかったのに・・・
でも、この熱じゃどうにもできない。多分おとなしくしてれば明日には下がってしまうだろう。だから今はとにかく寝よう・・・・・・
さっき飲んだ薬が効いてきたのか、私はすぐに眠りの世界に引きこまれた。
「・・・ん・・・・・・」
おでこに何かあたたかいものが触れた気がして、私は目を覚ました。
「あ・・・わりぃ。起こしちまったか」
「・・・・・・へ?そ、宗介さん?!」
目の前には、絶対にここにいるはずのない宗介さんがいて、思わず私はベッドから身体を起こした。宗介さんは制服姿で、私のベッドのすぐ横に座っている。
・・・もしかして自分に都合のいい夢でもみているんだろうか。
「まだ熱あんだろ。寝とけ」
でも、宗介さんの大きな手がふわりと頭を撫でてくれて、これは現実なんだということにやっと気付く。
「あ、あの・・・でも、宗介さん、なんでここに?」
『寝とけ』って宗介さんには言われたし、まだ身体もだるいけど、驚きの方が大きすぎてそれどころじゃない。
昨日は電話もメールもしていないのに、なんで私が風邪で学校を休んでることを宗介さんが知っているんだろう。