第18章 悩める季節 その1
「ヒカリ?お前、何変な顔してんだ?」
「ぅぎゃああ!!」
自分の考えに集中していたら、いつの間にか宗介さんがすぐ近くに来ていて、私は可愛げのない悲鳴を上げてしまった。
「おい、何て声出してんだ。俺は化け物じゃねえぞ」
「ご、ごめんなさい!急だったからびっくりしちゃって・・・」
心の準備もまだなのに急に宗介さんが目の前に現れて。私は宗介さんと目を合わせることができない。
「はぁ?・・・てかお前、なんか今日おかしいぞ。練習中、わざと俺の方、見ないようにしてただろ」
「そ、そんなことないですよ!」
・・・やっぱり宗介さん鋭い。そして今も私は宗介さんをまともに見ることができない。
「はぁ・・・そんなことあるんだよ。お前、ほんっと色々わかりやすいからな・・・」
じっと宗介さんが私を見下ろしてくる。その瞳に何もかも見透かされてしまいそうで、正直、この場から逃げ出してしまいたいぐらいだ。
でも、せっかく今二人きりなんだからこのチャンスを逃しちゃダメだ。・・・よし!
「あ、あのっ!宗介さん!」
「あ?・・・いきなりなんだよ」
「く、くく・・・くり・・・・・・」
「栗?・・・食いてえのか?」
・・・ああ、もう天然!・・・違う。これは私が悪い。でも、私どれだけ食いしん坊だと思われてるんだろう。
「ち、違います!あの、くりす・・・」
「おーい!お前ら、もうみんなあがっちまったぞ」
凛さんが私達の方に向かって近付いてきた。
・・・無理。もう無理。
「あ、あのっ!お二人とも、お疲れ様でした!!そ、それでは今日はお先に失礼します!!」
「はぁ?!おい、ヒカリ」
そこで限界を迎えた私は、宗介さんと凛さんに背を向けると、プールを後にした。
バタバタと急いで着替えを済ませ、渚先輩達へのあいさつもそこそこに、私は逃げるように家へと帰ったのだった。