第4章 許して○○
「お父さん、お酒買ってきたからお母さん放してあげて」
私は財布とビール瓶を父に突き出した。
父は黄ばんだ歯を見せて笑うと掴んでいた母の髪を離した。
母の肩、顔にはアザが出来ていた。血も滲んでいる。そんな母に救急箱だけを渡すと部屋に戻った。
私の家は最悪だ。
すると誰かが私の部屋のドアをノックした。
「玲香ちゃん、いい?」
母だ。
私はいいよと言うと母はドアを開けて入ってきた。左手には家計簿が握られている。
鬱のくせに、家計簿だけはきっちりつけている。これも母の性分なのだろう。
「もうね…お金がないの」
家計簿右の下部分。合計と母の手書きの文字があり、その下を見ると残高5000と震える字で記されていた。
もちろん貯金なんてあるわけがない。貯金はとうの昔に父が酒とキャバクラに使い切った。
「どうしたらいいの…」
母が私の足元で泣き始めた。このままではアパートの家賃が払えない。
「泣かないで。私が稼いでくるから」
結局はまた、しなければならない。
「ごめんね…お母さんが…働けなくて…」
「大丈夫」
一回にとれるお金は多くてせいぜい4,5万。
アパートの家賃代などを含めれば今から10万近くは稼がなければならない。
もう月末だから急がなくては。
母が部屋を出た後、私はケータイを開けて10人ほどにメールを送った。
今すぐ会える人で、援交してくれる人。
すると3つ返信がかえってきた。
お得意さんと新規とリピーター。
私はお得意さんの橋本に返信を送ると急いでメイクを仕上げて髪をまき、服を着替えてもう一度アパートを出た。