第2章 見つけないで○○
ホームルーム終了のチャイムが鳴り、クラスメートたちは一限目の授業の用意をする。
「は〜〜、つまんなかった〜〜」
「次、倫理でしょ。余計につまんないわよ?」
もう眠そうにあくびをする摩耶子は引き出しからノートをとり、パラパラと眠る。少しのぞいてみるとノート枠の周りには色んな落書きがあった。
「なにその落書き、摩耶子らしいわね」
ふふっと笑って私もノートをめくる。ノートの景観を綺麗に保つためにそういう落書きはしないと決めている。
いちいち細かいかもしれないが気になるものは仕方がない。
「もうお昼ご飯の時間がいいよね〜〜、それか数学」
「数学だけはごめんだわ」
すると一限目開始のチャイムが鳴る。チャイムと同時に入ってきた先生は相変わらず派手なメイクをしている人だった。
起立、礼、の合図で挨拶をし、椅子をひいて座る。
私はこっそりポケットに忍ばせていたガラケーを見て母からの連絡がないかと見るが、大量のメールは全て父からだった。
帰りに酒を買ってこいだの金が足りないだの母が使えないだの50もの通知は私を空にするものだった。
今時ガラケーなんて古いとも思う。でも私の家にはケータイを変えるだけの余裕はない。父の月々の高額のケータイ料と酒代とギャンブル代に消えていくからだ。
私がどれだけ頑張っておじさんと寝ても私の家族はいつも貧しいのだ。
「ーまさん、霧島さん」
「あっ、はい」
知らない間にあてられていたみたいだ。摩耶子はにやにやした笑いを浮かべて私を見ている。
慌てて立ち上がると真っ赤に塗りたくられた唇を開けて私を注意した。