第2章 見つけないで○○
私の口の中に甘ったるいチョコバナナ味がして私は眉をひそめる。
摩耶子の肩を突きかえすようにして押すと口からキャンディーが離れた。
「なにこのアメ、甘すぎ」
「え〜、これ昨日発売された藤本さんとこの新作なんだよ〜」
この学院ではしばしこういうことが起こりうる。
去年は瑛美が誕生日に特別な工場でしか作れないガラスコップをくれたこともあった。
私は摩耶子と一緒に青色の絨毯の上を歩いていると放送のかかる音がした。
『ただいまから、朝礼を始めます。百合校舎の生徒は講堂に来てください』
教室のドアを開けようとしていた摩耶子と私はカバンだけ机に置くとまた教室の外に出て階段を降りる。
落ち着きのある雰囲気の講堂にはすでに大勢の生徒が集まっていた。
「新しい先生の紹介かなあ〜」
舌でころころとキャンディを転がしている。静まり返った講堂にマイクの調整音が響く。スタンド式のマイクの前に立った少女は大きく息を吸うと口を開けた。
「おはようございます、みなさん」
よく透き通る声で挨拶をするのは生徒会長の二藤愛子だ。緩く巻かれた髪に華やかな目鼻立ちはまさしく女王の貫禄、お嬢様としての気品が溢れんばかりに放たれている。遠くから見ていてもはっきり分かる大きな瞳と真っ赤な唇。
愛子の父は現内閣総理大臣の二藤敬次郎の娘だ。この学院の経営費も敬次郎が少し補っているということもあり誰も彼女には口を出さない。