第4章 ありふれた日常
テーブルに並べられた重箱は、正月でもないのに
俺の好物やら、色とりどりの料理が、綺麗に納まっていた
はにかんだ笑顔を見せる
それが、俺に向けられていないことくらい直ぐに気付く
まぁ、カッコいい部類には入るよな
スタイルいいし、ニコニコしてるし
女子高生から見たら、
憧れの対象になるのかも知れない
「うっわ…スゴいね。
これ、ちゃんが作ったの?」
「名取さん…あ、家政婦さんに手伝って貰ったんですけど」
「お手伝いさんもいるんだ~
へぇ~、……うまそ~」
が焼いたと言う、
だし巻き玉子を指で摘まんで
ひとくちで頬張ったマサキは、満面の笑顔を見せた
「スッゲー美味い!」
「良かった」
目の前で起こる、時間の流れに
気付かないフリして、煙草に火を点けた
俺の部屋に、
遊びに来てる妹と
居候してる"友人"
ただの友人なら、
ホントにそうなら、
何の問題もないと思う
「ねっ、しょーちゃんも食べようよ。美味いよ!」
「え…ああ」
点けたばかりの煙草を、押し潰し
の隣のイスに座った
マサキに渡された皿を受け取り、料理を口に運ぶ
「あ、うめっ」
「名取さん、お兄ちゃんが好きだからって」
「覚えててくれたんだ」
家を出てから、ずいぶん経つ
忙しいのを理由に、
なかなか帰る事もないけど
可愛がってくれた名取さんのが、俺の"オフクロの味"になってしまってる
懐かしい記憶は、
やっぱり、少し切ない
「会いたがってたよ。
今の時期、風邪も引きやすいし、転た寝なんかしてないかって」
「はは、大丈夫だよ。
子供じゃないんだし」
「でもさ?しょーちゃん、
寝相悪いじゃん。
寝惚けて脱い」
「ぶはっ…、ゴホッ…」
「きゃっ!お兄ちゃ」
サラリと発言するマサキに、思わず吹き出してしまう
「わりぃ、と、とにかく!
名取さんには、また顔出すって言っといて」
「わかった」
不自然に見えないよう、作り笑いを張り付けて、
俺の狼狽えにも気付かないマサキは、
幸せそうに食ってるし
やっぱり…
油断できねぇな