第1章 Look at the skies
上手い酒と料理で、
ほろ酔い気分のまま店を出る
まだまだ意識はしっかりしてるけど
身体は随分軽く感じた
火照った身体が、
冷たい空気に包まれて
すげー、気持ちいい
タクシーを拾おうかと思ったものの、
このまま歩いて帰ろうと真っ直ぐに歩道を歩き出した
駅を離れ、繁華街を抜けると
一気に街灯は減り、人気も無くなる
身体は直ぐに冷え始め、
コートの襟元を立てた
やっぱ、タクシー拾えば良かったな~…なんて、後悔しつつ
近道の公園の敷地内を歩き出すと
ベンチ脇に、何かの気配を感じた
ギクリと身体を強ばらせたのは、それが明らかにヒトを象っていて……
恐る恐る近寄ってみた
誰か倒れてんのかと、顔を覗き込んだ瞬間
一気に、酔いが覚めそうなほど、心臓が飛び跳ねる
そりゃ、そうだろ
さっきまでピンピンしていた男が倒れてんだから
「ちょっ!もしもしっ!?
大丈夫ですか!!」
身体を揺さぶりながら、 顔を近付け心音を確かめた
「ん~…、なにぃ……?」
呑気な声に胸を撫で下ろし、全身の力が抜ける
「……具合、悪いのか……?」
目蓋を擦りながら、
俺を見つめるヤツに声を掛けた
「土足……」
「は?」
「そこ……踏んでる」
指差しされた足元に目線を移すと……
ダンボール箱に乗った、俺の足
「………は?」
「それ、俺のお布団だから」
「………へ?」
後退りしたダンボールには、しっかり足跡が付いていて……
「もー、やっと眠れたとこだったのに……」
「寝てたの!?」
「当たり前でしょ?
眠いんだもん」
「当たり前って……」
そのうち、この男が
ゴミ置き場でダンボールを集めていた事を思い出した
ナンだよ……
だから、集めてたっての?
心配して損したと思った瞬間
「びぇっっぐしょん!!」
ヤツのクシャミが、
静かな公園に響き渡った