第1章 Look at the skies
「おわっっ、しょーちゃんが投げたりするからっ!」
「あ~わりぃ(笑)」
ビチャビチャに濡れた手で、缶を持ち上げ、苦笑いしてる
「………」
風呂から出たばかりなのに、
すっかり染みになったスウェットを、困った眼差しでパタパタするから
ヤツの腹が、見え隠れした
昨日見た裸が、不意に頭に過ぎる
父親からの気が重い電話
わざわざ家に掛けるのは、
きちんと帰宅してるかを伺うモノで……
このマンションだって、
当たり前に合い鍵を持った母親が、突然遊びに来たりする
遊びに来たなんてカタチばかりで、
ココに女の形跡がないか……
父さんに言われて、
監視しに来てるんだろう
どう隠れて付き合うと、すべて調べられ知らないとこで
断ち切られてんだから……
だから、
ほんの反抗心だった
女、なら
わかってもさ?
男、なら
どうなの?
お堅い昔気質の父も、
夫に忠実な控え目な母も
疑いすら、持たないだろうな
「あ~、濡れちゃったな。
とりあえず脱いだら?」
「うん」
クスクス笑って、ヤツに言うと
素直に脱いで、
上半身が露わになった
細い割に筋肉のついた男らしい身体
濡れたスウェットを手に、俺と視線を合わせる
「あの、着替え
借りてもいいかな」
ガラにもなく遠慮がちに言うから、
なんか変に可笑しくなって
気まぐれを口にした
「なぁ…?
お礼って、してくれんの?」
「へ?」
ナンのこと?って、
不思議顔で、まん丸な目ぇして
そうだよ
こんな都合のいいヤツなんていない
せっかくだから、
利用したらいいんだよな
「……だから。
お前、巧いんだろ?」
「しょーちゃん?」
一歩近寄り、
至近距離の裸に、
ワザとヤラシイ視線を送る
「試してみようかと思って……」
片手に持ったままの缶ビールを傾け
口に含むと
そのままヤツの頬に掌を添え
ポカンと開いた唇に、
ソレを流し込んだ