第1章 Look at the skies
風呂に入って気分転換して
入れ違いに、マサキがバスルームに向かって暫くすると
機械音が部屋に鳴り響いた
携帯ではなく、
わざわざ家に掛けてくる時点で、
それが誰だかわかっていた
躊躇しながらも、
出なければまた、
会社で呼び出されるだろうと
仕方無く受話器を手にする
低い貫禄ある声は、想像通りの人で
スゥ…、と息を吐き、気を引き締めた
「何か用でしたか?
………社長」
わざと、そう呼んだものの
用件はやっぱり、想像通りだった
『私用だから、
その呼び方は止めなさい。
例の件で電話したんだ』
「……何度も確認しなくても、ちゃんとわかってるから」
苛立ちを抑え、
変わらないトーンで答えた
「大丈夫だよ。心配するような相手もいないし」
『特定の相手じゃなくても、後からいろいろ出て来たら問題が…』
「だから、そんなのないって。
どうせ調べてわかってんだろ?」
昔、学生の頃
それなりに遊んでいたのを知ってるから、
今になっても、必要以上に詮索されてしまう
聞き飽きた話に、
適当な返事をし電話を切った
そのタイミングで、
開いたドアからアイツが顔を覗かせたから、
そういえばいたんだと、我に返る
「はーっ、あったまった~」
「……何か飲む?」
「飲むっ!」
満面の笑顔の即答に、
つられるように笑って頷くと
冷蔵庫を開け、良く冷えた缶ビールを、ヤツに放った
「わわっ、ちょっ、」
微妙に届かない距離に放たれたソレを
前のめりになって、上手くキャッチする
同じ缶を先に開け、
一口グイッと喉に流し込んでると
ヤツが缶ビールを開けた瞬間
湧き出た泡に、慌てて唇を寄せた