第1章 Look at the skies
連日の接待に解放され
久々のひとりの晩飯に、俺が選んだのは
安くて早くて美味い、
某チェーン店の牛丼だった
懐石だのフルコースだの
いくら美味くても、毎日だと流石に飽きる
たまに無性に、
こういうのが欲しくなる
時間も短縮出来たし、これで家に帰れば、
ビールを飲みながら、
溜まりに溜まった録画物を漸く消化出来るだろう
箸袋に使った箸を納め、席を立とうとした瞬間
向かいのカウンターに座った男が、視界に入った
ゴソゴソとジーンズに手を突っ込み……
今度は、上着のポケットをひっくり返してる
そのうち、
挙動不審に周りを見渡したかと思ったら
椅子から尻を浮かせた
これって……
カウンター内の店員は、
忙しなく動いていて多分それに気付いてはいない
ゴクンと息を飲んだ瞬間だ
華奢な身体を翻し、
あっという間に店内を後にした
自動ドアの開閉音に気付いた店員が、あ、と声を漏らしたのに気付いて
俺は思わず、カウンターに千円札を置いた
「あっ!連れの分も一緒に」
はい?って……
不思議顔のバイトの視線に、曖昧な笑顔を残して
そりゃそうだなと内心突っ込む
一瞬振り返った男の後を追うように、
俺も足早に店内を飛び出した