第1章 Look at the skies
「うわうわ!すげー
…って、お邪魔しまーす」
キョロキョロしながら、俺の後を付いて来る男
……そりゃそうだよ
俺が、一緒に来いっつったんだから……
「とりあえず、
そこのソファーでも座ってて」
「うん!」
なんで俺、こんな軽率なことしたんだろ
早くも後悔しながら、ヤツの為に熱いコーヒーなんか入れてさ……
マグカップを2つ持って振り返ると
相変わらず落ち着かない様子で部屋を見渡している
「インスタントだけどな」
「わ~、ありがとー」
屈託なく笑い、躊躇なく受け取る姿に、
連れてきた俺も俺だけど、コイツも大概だよな……と思う
なに無神経に笑ってんだよ
……ムカつくのを通り越して、呆れるわ
「えっと、とりあえず風呂入るよな?
……身体冷え切ってるだろうし」
スイッチを入れながらヤツに聞くと
キョトンとしながら、丸い瞳を更に大きくした
「いいの?」
「……いいよ」
仕方ないだろ
連れて来ちゃったんだから
第一、あんな生活してたらさ
風呂、ちゃんと入ってんのか?
……なんか、その辺心配だし
「あ~!
コイツ風呂入ってねぇな?とか思ったでしょ!?」
「お、思ってねぇよ!」
「ホントにぃ?
でも俺、昨日もちゃんと入ったよ。
キレーなお姉さんが泊めてくれたの」
「……あっ…そ~」
それなら今日も、そこ行けば良かっただろうが
「とにかく、
それ飲んだら風呂入れ」
「わかった。そうするー」
はぁ、とワザと大きなため息をついても
ヤツは全く気にもせず、
熱々のコーヒーを、
フーフー言いながら啜ってる
「…そうだ。名前は?」
いろいろ考え過ぎて、
肝心なコト聞いてなかったわ
カップを傾け、一口含み、目を合わす
「マサキ。
オニイサンの名前は?」
「俺?
……翔」
「翔…かぁ。
じゃ、しょーちゃんって言うんだね」
勝手な呼び方に、
思わずコーヒーを吹き出しそうになる
だけど、鼻に掛かった声が
不思議と不快に感じなくって……
"止めろ"とは、思わなかった