黒バスshort stories ver,Christmas
第13章 薄花桜 ≪今吉翔一≫
隣を歩く彼がどうしても気になって視線がチラチラと頼りない。
ロングコートに身を包んだ彼は高3だけあって流石に大人の男の人の雰囲気を醸し出している。それが先ほどから気になって仕方がない。
「なんや、自分さっきから危ないことしよるな~。見てられへんわ。」
ついに彼は気がついたみたいでポケットから手を出すと私の手を引っ張るようにして歩き出した。
「い、いつから気が付いていたの?」
「ずっと前からや。面白うてほっといたらどうなるんか見とったら危なっかしくてなぁ。この前ドアにぶつかってるの思いだしたら無視でけへんくなってきた。」
口をへの字に曲げて私に言う彼に、すまなくなって俯いた。
いつも、迷惑かけてばかりで大人な相手だから自分も思わず背伸びしてしまう。それで、失敗ばかりしでかしてまた迷惑をかけての繰り返し。
そんな自分がいたたまれなくて。
「そない落ち込まんでや。別に怒ってへんわ。」
「でも…」
「自分そない後ろ向きで面白いん?俺は嫌やわ。」
おそらく私が何を考えているのか分かっているのだろう。だけどあえて口に出さない彼の優しさに胸がうたれる。