<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第197章 桜と幸せ ― 姫&幸村 ―
「なんだよ、当然だろう?俺が戻って来なかった事、無いだろ?」
幸村は私の願いにちょっと笑って、そして私の肩を抱き寄せる。
「うん、そうだけど…だけど私はいつも心配だよ…」
私の額に軽く口付ける幸村は真剣な瞳で私を見る。
「俺はおまえが待っているから強くなれる。必ず帰るから待っていてくれ」
「絶対だよ。必ず戻ってきてね」
私の願いを包んで、幸村はそうして出陣して行く。
桜の花びらが舞い散る。
幸村と約束した桜の花が風にのって踊るように私の周囲に舞う。
山の神に毎日祈るのは、幸村の無事の帰還。
私の祈りが通じたのか、幸村は怪我ひとつなく戻ってきてくれた。
「ただいま、舞」
桜の花が散り終わる前に大好きな幸村が戻ってきてくれた。
桜よ、私の願いをありがとう。
山の桜はほとんど散り、緑が映える季節に変わりつつある。
現代なら気付かない小さな奇跡と幸せ。
幸村と一緒だからそんな事にも気付けて、小さな小さな喜びを積み上げていく。
「おかえりなさい」と幸村の無事を心から安心して、声をやっと掛けた。
<終>