<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第97章 哀しみのりんご ― 姫&三成 ―
「カラシさんに美味しいりんごを持って来ました」
三成くんが家康の御殿に来たのは、三成くんの猫さんがケガをしたのを、家康がこっそり手当てしてあげていたのが知られてしまったから。
三成くんは御礼にと、ワサビにりんごを持って来てくれたのだけど…名前が違うよ、三成くん。
「あれ?サンショウさんでしたっけ?」
「違う、違う、ワサビ、だよ」
思わず私は言ってしまい、三成くんはいつもの天使スマイルで私を見てにっこりした。
「ワサビさんでしたか、失礼しました。さぁりんごをどうぞ」
肝心なワサビはお腹が空いていないのか、りんごには感心を示さず、たたっと明後日に行ってしまった。
「ごめんね、三成くん。ワサビ、お腹空いてないみたい」
私は急いで三成くんに謝った。
「そうなのですね、残念です。ではりんごは置いていきますので、トウガラシさんに後で差し上げてください」
「うん、ありがとう」
…名前がまた違う、と突っ込みたいのを、私は止めておいた。
「それにしても…」
三成くんは目を細めて、真剣な顔付きで私を見る。