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<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹

第96章 優しく、甘い ― 姫&元就 ―


月灯りがほんのりと差し込む部屋の中、行灯をひとつだけ灯し、私がお酒をグラスに注ぐ。

元就さんは夜着をはだけさせたまま、私が注いだグラスを受け取り、聞いてくる。

「なんだ、これは?」

ぼんやりとした行灯の光の中では、ワインはどす黒く見えてしまっている。

「ワイン…葡萄酒と言って南蛮のお酒ですよ」

「ふぅん、南蛮の酒か…信長が好きそうだな」

元就さんの発言に私は驚く。

「どうしてわかるんですか?信長様は確かに葡萄酒がお好きなんですよ」

「わかるさ、信長は南蛮かぶれじゃあないか。
菓子も金平糖という小さい砂糖菓子が好みなのだろう?」

「よくご存知ですね。金平糖、見た事ありますか?」

「ああ、一つ一つが小さくてとげのある菓子だろう。砂糖で出来ているから、とにかく甘い」

「召し上がった事、ありますか?」

私の問いに、頷く元就さん。

「ああ、ある。一つ口にして、あの甘いものを平気で口にする信長の味覚を疑った」

甘いものは好きではないらしい元就さんは、金平糖の味を思い出して、心底嫌な顔をした。

それにしても、元就さん、安土城の事に詳しいなぁ、と私は思い、それを口に出した。
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