<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第95章 わがままだけど好き ― 姫&秀吉 ―
「おい、突然驚くだろう?」
怒るような言葉に聞こえるけれど、秀吉さんの顔はあくまで笑顔。
「でも嬉しいよ、ありがとうな。俺も」
そこまで言って、秀吉さんも私の耳元でそっと囁く。
「俺も舞が大好きだ」
甘い囁きに私の胸がときめいて、からだの熱がふわんと上がる。
その、私の様子に気が付いた秀吉さんの瞳が艶めいて揺れた。
「早くまんじゅう食べちまおう。御殿に戻って」
更に秀吉さんが声を低くして、私に囁いた。
「俺、舞を食べたくなったな」
そんな事を言われたら、ますます私のからだの熱があがっちゃうよ。
「…うん、良い、よ…」
私も答えると、秀吉さんは私の手を引きながら御殿へ戻る。
甘い秀吉さんからの囁きは、くすぐったいけれど、私に心地よく流れてくるの。
大好きな人と過ごすひとときは、蕩けそうなくらい熱い吐息と優しい動きに翻弄される。
「秀吉さん、大好きだよ」
私の告白が秀吉さんに伝わると、秀吉さんの優しくて色気を含んだ瞳が私を見つめ、私の心を絡めとり、ふわふわと弾む気持ちを掬い取って、私の全てを秀吉さんのものにしていくの。
<終>