<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第95章 わがままだけど好き ― 姫&秀吉 ―
「秀吉さん、いつも荷物持ってくれてありがとう」
反物を買いに行くと言ったら、秀吉さんが付いてきてくれた。
歩いている途中、町の人にずっと声を掛けられている秀吉さん。
自分の大好きな人が町の人から人気があるのは嬉しいけれど、一緒に歩く私はちょっと寂しい、なんて言ったらぜいたく、かな。
「ん、どうした?疲れたか?まんじゅうでも食べて帰るか」
秀吉さんが私の顔を見て、茶屋へ寄って行こうと声を掛けてくれた。
「うん、ありがとう、おまんじゅう食べたいな」
私達は近くの茶屋へ赴き、秀吉さんはお茶とおまんじゅうを頼んでくれた。
「ここのおまんじゅう、甘さがちょうど良くて美味しいんだよね」
私が座りながら喜んで言うと、秀吉さんが笑みを深くした。
「やっぱり疲れてたのか、それとも何か嫌な事があったのか、さぁ、どっちかな」
「え?」
「反物屋を出てから浮かない顔をしていたからな、疲れたのか、歩いている最中に何か気に入らない事があったのか、どちらかな、と思っていたんだけど、この様子なら疲れたようだな」
秀吉さんてば、私がそんな顔していたのも見ていてくれたんだ。
「ごめん、私がわがままなの」