<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第35章 正月かるた大会 ― 姫&安土城武将 ―
「め」と秀吉が言った途端、ぱしんと小気味良い音と舞の声がした。
札が数枚飛び散るが、目的の札をちゃんと狙っていた。
「え…今の早さは…」
あっけにとられる武将達。
とった下の句の札を口にあてて、舞は微笑んだ。
「うふふふ。実は私、県代表に選出された腕前なんです」
「けんだいひょう?」
全員で同じ言葉を唱える。
「えーと、各藩でひとりずつ、その技能が優れていると選ばれる人、です」
それを聞いて武将達がうなる。
「だからにこにこしていたのか」
「それは敵わないな」
「道理で黙って口付けの賞品を受け入れたはずだな」
口々に武将達は言う。
「まだ一首目だ。終えてから何か言え、貴様ら」
信長が忌々し気に言い放ち、武将達は静かになった。
「舞、貴様、よくぞ隠しておったな」
「言えとは言われてませんからね」