第10章 好意
「手貸す!!」
「うんっ!」
背中に感じる彼の体温に意識が持っていかれる。
竿に集中しないと駄目だとわかっているのに重ねられた手にドキドキして力が入らない。
背中から抱き込まれるようなこの体制に集中できない。
「ちょッ!硬ッ、マジでこれ大物だぞッ!!」
「ッ!!」
耳元で話さないでッ。
ドキドキとする動機は激しくなり余計に力が入らない。
立っている事もやっと。
もうどうしたら良いかわからずパニック寸前だったその時、一番の強い引きに二人の身体が前へと引っ張られる。
咄嗟にグッと足に力を入れて踏ん張るけど踏みとどまれない
。
二人で必死に踏ん張っていると水面から見たこともない大きな魚がバシャッと大きな音を立てて跳ねた。
余りの大きさに思わず言葉もなく唖然とするとグイッと水面へと再度引っ張られて二人ともバランスを崩して水の中に落ちる。
「ぷはぁっ!!ッアハハハハすげーーーッ」
「本当ッアハハハハ」
「スゲーデカかったな!!」
「うん!」
「絶対あれココの主だぜ!?」
「だね!!あー糸切れて残念だなぁ」
「アイツ専用の糸じゃないと無理じゃね?ククッあー絶対釣りてー!!」
川から出てお互いにずぶ濡れの服を脱ぐ。
持ってきていた海パンに履き替えて服は木に引っ掛けて干した。
時間も良い時間。
レジャーシートを敷いてお昼の用意をする。
「うまそぉぉ」
「口に合うと良いんだけど」
「へ?コレ優仁が作ったのか?」
「え?あっ、そのっ全部じゃないよ?お祖母ちゃんと一緒に・・・その・・」
今更気が付いた。
男が料理なんてこの歳だときっと変な事だ。
だから私が早起きして手伝いに行った時、お祖母ちゃんは一瞬驚いた顔をしたのだろう。
バカだなぁこんな風に女子だった頃の普通が出るなんて。
まだ注意が足りない。
気味悪がられるかもと恐る恐る視線を大野君に向ければ彼は私が作った唐揚げを一口口に入れた。
「うまっ!やばっ何だコレ、こんなうまいの俺初めて食った」
「おッ大げさだよ」
「いや、マジで。家でもかーちゃんコレ作ってくれねぇかな?」
こんな風に何度彼のこの態度に救われただろう。
その度に泣きたくなる。
そして、想いは深くなる。