第5章 夏の思い出
思わず溜息をつきながな女子達に近づく。
今まさに相手の顔を叩こうとしていたクラスメートの女子と庄次先輩の間に入れば頬に感じる熱。
バシーンッと言う音と共に騒いでいた女子達が動きを止めた。
正直痛いけど、静かになったのなら好都合だ。
「喧嘩はそこまでにしよ?せっかくプールに来たんだしこんな事してる時間が勿体無いよ」
「あっあの藤原、わっわたしごめんなさいッ」
「気にしないで、そんなに痛くないから」
「でっでも」
「ほら泣かないでね?庄次先輩もケガはないですか?」
「えっええ、けど藤原君がッ」
「僕は平気です、ケガがなくて良かった。先輩達すみません、今日はクラスで来てるから今回は一緒に遊ぶのは遠慮してもいいですか?」
「うっうん」
「また機会があったら遊びましょう」
「本当に!?」
「はい」
そう言えば先輩達は納得したように去っていった。
何とかその場を落ち着けられてホッとすれば何故か周囲から拍手。
意味がわからずにオロオロしていると急にグイッと手を掴まれる。
「智君!?」
「ちょっと来いッ」
「え?」
何となく怒ってる、そんな気がして血の気が引く。
一緒にいるようになって自分に対して彼がこんな感じの態度を取った事がない為に本気で焦る。
何がダメだった?
どうしよう!!
オロオロしていれば連れて行かれたのは更衣室。
少し乱暴にベンチへと座らせられる。
「さっ智君、あっあの」
「鍵!」
「え?」
「ロッカーの鍵貸して!」
「あっはい」
要求された鍵を渡せば大野君は私の荷物の入ったロッカーを開けて鞄の中から何時も入れてるミニ救急道具入れを取り出した。
袋の中から小さな湿布を取り出すと頬に貼る。
「馬鹿っ!!!」
「ごめんなさいッ」
「あんな状況の中に入っていくとかッ!!何考えてんだよ!?」
「ごめんなさいッ!!」
大きな声で怒鳴られて身体がビクッとなる。
彼は普段滅多な事で怒らない。
穏やかな人だと有名な話である。
そんな人がこんな風に怒るなんてと泣きそうになる。
取り出したハンカチを持ってしゃがんだ大野君と目が合う。
そっと口の端にハンカチを当てられる。