第2章 始まりのアレグロ
【歌side】
『えっと、1-Aだっけ…。』
広い校内を少し早足で歩く。この学校はとにかく広い。1年の教室もそこそこ遠い。
『あった、ここだ』
勇気と不安の入り混じった気持で扉をあけると、爆豪が机に足を乗せ、下品というか、行儀の悪い体制で座っているのがいきなり目に入った。
『うっわ…。』
入学早々、目に入るのがあんたですか。というか、注意されてるやん。聞けよ。
というまなざしで見つめると、こちらに気付いたのか机から足を下ろし立ちあがり、近づいてくる。
爆「よぉ、同じクラスか。」
『…おはよ、同じクラスだとはね。』
つくづく自分に縁があるのかないのか、わかんなくなってきたよ。
天「こら、君!女性に対してその口のきき方はなんだ!」
と、今まで爆豪のことを散々注意していた青年が、爆豪に対してさらに注意してきた。
『女性扱いしてくれてありがとう。』
爆「あ?こいつに女性扱いとかイラネェだろ。」
『爆豪、あんたのその口、私の個性で縫いつけてあげましょうか?』
爆「はっ、なんならやるか?」
教室中が一気にざわめく。おい、こいつら大丈夫か?!と、皆が青ざめているのがよくわかる。
そんな時、ちょうど後ろから「歌?」と声がかかる。
振り返るとそこには、いつぞやの入試試験で一緒になったいっくんと、女子生徒が一人いた。
『いっくん!…と…』
麗「は、はじめまして!麗日お茶子っていいます!」
『…かっ、かわいい~~~~~~!』
よろしくね、と笑顔言う彼女は確実にいやしだった。
思わず抱きしめてすりすりとしたくなったが、後ろで布切れのする音がした。
?「友達ごっこがしたいならよそへ行け。」
驚いてみんな彼を凝視する。そんなこと露とも気にせず、彼は懐からエネルギー補給用ゼリーを取り出し、
?「ここは、ヒーロー科だぞ」
一気に飲み干すと同時にそう言い切った。