第1章 別れと再会は突然に
「あぁ。」
と、千兄は短く返事をして、また、視線をアルバムに戻した。
「早く会いたいね。」
と、私は、言った。
そうだなと、千兄が応える。
早く、万兄に会いたい。でないと、寂しい。
そう思うのは、私だけじゃない。
千兄や百さんだって同じ気持ちだ。
早く会いたい。
ただ、それだけ。
「千兄?千兄も、シャワー浴びてきたら?ずっとこうしてても、どんどん気が滅入るだけだよ?気分転換しよ?そして、また、明日から頑張ろうよ。」
こうして、ずっと思い出だけを見つめているとだんだんと心を閉じてしまい、精神的にあまりよくない状態になることを私は、知っている。だから、少し、悲しい思い出を振り返ったらもう、考えないようにするのだ。
「あぁ、そうだな。」
と、言いつつも、中々、アルバムを手放さない千兄。
仕方ない。こうなったら、もう少し、放っておいた方が良いかな?と、思った私は、先ほど飲み食いした所を片付けようとその場を立ち去ろうとすると、突然、後方の方に引き寄せられた。
何事?と、一瞬思った次の瞬間、千兄に、後ろから抱き締められていることに気が付いた。
「ちょっ…ちょっと、千兄!?ど、どうしたの?」
初めての事に慌てふためく私。
でも、さらに千兄は抱き締める力をギュッと強め、今までにないくらいのか細く、今にも消え入りそうな声で、
「お前だけは…お前だけは、どこにも行かないでくれ」
と、言った。
それだけでも、千兄の心が余程追い込まれてるのが窺える。
私は、向き合って、
「千兄、私は、どこにも行かない。千兄と百さんのそばでずっと、ペンライトを降り続けるよ。たとえ、凄いトップアイドルになっても、売れないアイドルになっても。ずっと、そばにいるよ。」
千兄の目を見ると、そこには哀しさと寂しさが広がっていた。
「だから、そんな顔しないで?」
千兄の手を優しく振りほどき、その手を掴み、指切りする。
「ね?落ち着いた?シャワー浴びてきたら?」
すると、千兄は私との指切りを振りほどき、また、私を抱きしめた。
「本当に?そしたら、今夜…」