第1章 別れと再会は突然に
優しくて、大好きだった私より6つ上のお兄ちゃん。
血は繋がっていないけれど、隣に住んでいて親同士が仲が良いこともあって、私たちは本当の兄妹のように育てられた。
いつも、私の相手をしてくれる、万兄が大好きだった。
勉強が分からなくて、よく、万兄の部屋に行っていた。
そんな私をいつでも、優しく招き入れてくれる。
万兄が高校生になってからは、万兄が一人暮らしを始めた。自分の家から行けない距離でもなかったので、万兄のことが好きな私は懲りることなく万兄の家を訪ねた。
優しく招き入れてくれるのは変わらなかったけど、一人暮らしするようになってからよく、ヘッドホンして自分の作った曲を確認しているシーンをよく、見るようになったっけ。
そして、気付くと私は、ライブハウスにいた。
『未完成な僕ら』を歌っている、万兄と千兄。
観客の歓声が高まるなか、私も気分が高まる。
キラキラと輝く、万兄と千兄はすごく格好よくて、ドキドキしていた。
いつまでも、万兄と千兄はキラキラと輝くアイドルでいると思っていた。
突如、ガシャンという音がしたと思うと同時に重い何かが人にぶつかったような音がした。
観客の最前でステージで見ていた私は、一瞬目を疑った。
万兄が顔を押さえ、うずくまっていた。
薄暗くて見えづらかったけど、万兄は顔からひどく血を流していた。
歓声が悲鳴に変わっていく。
嘘だよね?万兄?嘘だと言って。いつもみたいに、優しく笑って。
お願い、嫌!誰か、誰か助けて!
「誰か、助けて!万兄がっ!」
自分で、泣き叫ぶような声にびっくりして飛び起きた。
「また、あの夢…」
あの日起きたことが、本当に夢だったらいいのにと思いながら、ベッドから起きる。
あの日、『未完成な僕ら』を歌っていた万兄と千兄の上から照明が降ってきたのに気付き万兄が咄嗟に千兄をかばったのだ。
万兄は顔に大きな傷を負い、救急車で病院に運ばれ、無事だったものの、私と千兄を置いて、どこかへ消えてしまった。
千兄に『千らしく、Re:valeらしく、歌える場所を探してほしい』という、書置きを残して。
それから、万兄と千兄のファンだった百さんが千兄に歌をやめないでくれと頼み込み新たなRe:valeとしての活動が始まった。
それから、2年の時が経っていた。