第1章 *
暗い暗い水の中。
ここは・・・?
「・・・・こと」
誰?
「・・・真琴」
・・・はる?
待って・・・はる!
「はるっ!・・はぁ・・・はぁ・・・」
時刻はAM2:00。
深海のように暗い水の中にはるがいる。
光ってる。
なのにはるは暗い暗い水の中をすごい速さで泳いでいって
俺を置いていく。
待ってって叫んでも声は届かなくて
腕を、必死に伸ばすのに
はる触れることさえもできない。
はると恋人になってからずっと、はるが消える夢を見る。
それが現実になるんじゃないのかって
怖くて怖くてたまらない。
***
朝、俺ははるの家に行くのが日課。
―ピーンポーン。
・・・反応なし。
また風呂場かな。
「お邪魔しまーす」
裏口から入るとはるの家の匂い・・・と鯖の匂い。
鯖!?
急いでキッチンに行くと
水着にエプロンのはるの姿。
・・・ほっ・・・。
はるが目の前に現れる瞬間はどんな時よりも安心する。
「おはよ、真琴」
ーぎゅ。
「真琴?」
突然抱きついた俺にピクっと反応する体。
はるの驚いた声。
はるの匂い。
はるの体温。
大丈夫、はるはここにいる。
「ごめんごめん、はる。おはよ」
「・・・あ、ああ」
どうしたんだ、って目で見てくる。
「なんでもないよ」
って笑ってみせる。
我慢した笑顔。
ほんとは不安なんだよって言いたいんだよ、はる。
でも自分でもわけがわからないことをはるには言えないんだ。
心配かけるだけだから。