第1章 皆でお祝い♪ ゼノ様バースデー!
~皆で準備~
「マイン様、この飾りはどこにつける?」
少し離れたところから、ユーリが大小さまざまの星の形の飾りをヒラヒラとふってみせる。
「それ?えっとね………あ、あそこなんてどうかな?」
私は天井に近い壁を指さして答える。
「うん、いいね。俺もそう思った。あ、じゃあ、マイン様は、こっちをお願いできる?」
「まかせて」
12月7日の午後。
私とユーリとアルバートの3人は、シュタイン城の一室で朝から飾りつけをしていた。
「うーむ………誕生日おめでとうございます………ハッピーバースデー………どっちがいいだろうか………」
さっきから、大きな2つの横断幕を前に、難しい顔で腕組みをしているアルバート。
「あのぉ………」
見るに見かねて、声をかけようと意を決した、その時。
「しーっ!マイン様、今のアルに何言っても無駄だよ?」
私の耳元で囁くように、そう告げるユーリ。
「ああいう時のアルって、人の意見なんて耳に入って来ないんだよね。ま、こだわりあるみたいだから、気の済むだけ悩ませてあげた方がいいかもよ?」
確かに。
横断幕を作ろうという話が出たのは昨日の夕刻の事で、その後もゼノ様は公務があり、アルバートは遅くまでゼノ様についていただろうから。
きっと、徹夜して作ったに違いない。
少しの歪みもない完璧な出来の、2つの横断幕。
ほんと、几帳面だな。
思わずクスッと笑みがこぼれる。
「さ、こっちは俺達で終わらせちゃおう。まだまだやる事たくさんあるし、ね。この後はごちそう作りだもん。頑張らなきゃ」
ユーリが軽くウインクをする。
そんなユーリに笑顔で頷き、飾りつけを続ける。
今日はゼノ様の誕生日。
この日のために、私はずいぶん前から公務を調整してもらい、昨日からシュタインに滞在していた。
けれど、ゼノ様には急な会談が入ってしまい、昨日到着した時せわしなく挨拶を交わしたきりだった。
誕生日前日から一緒に過ごせると楽しみにしていたのにと、残念に思う気持ちを隠しきれなかった。
そんな沈んだ私を元気づけるかのように、ユーリとアルバートが誕生日パーティーの準備をしようと提案してくれたのだ。
今夜は時間を空けられるとおっしゃってくださったから………。
きっと、大丈夫―――。