第20章 猫と十四松
<十四松side>
僕は土手で素振りをしながら、頭の中はぐちゃぐちゃだった。
一松兄さんもヒナもびっくりしていた。
当たり前だ。
「十四松」
「……一松兄さん」
振り向くと、一松兄さんが猫のヒナを抱えて連れてきていた。
「あのさ……俺もお前と一緒。
だから、人のことばっかり考えてないで自分の気持ちを大事にしろよ」
そう言ってヒナを僕に渡して、手には薬を持たされる。
そのまま一松兄さんは帰ってしまった。
一緒……一松兄さんも僕とヒナが話してると胸が痛くなるんだ。
「自分の気持ちを大事にするんだったら、我慢しちゃだめなのかな……」
僕がそう言うとヒナはじっと見つめてくる。
僕はもう考えるのをやめた。
全部出してしまおうと思った。
「ヒナ、大好きだよ。
みんなもヒナのこと好きなんだ。
でも、僕……君を誰にも渡したくない」
僕は抱えたまま、ヒナの口に薬を入れる。
元に戻ったヒナにキスをした。
溢れる思いをこぼさないように……
「十四松。
私も大好きだよ」
「ほんと?やったー!
ねぇねぇ、どれくらい好き?!
僕ね、宇宙一ヒナのことが好き!」
「私も、う、宇宙一好きだよ!」
「やったぜ!
じゃあ、もう我慢しなくてもいい?」
「十四松、もともとそんな我慢してなくない?」
「してるよー!?
あーんなこととかこーんなこととか!
もう我慢しなくていいよね?!」
「え?ええっ?
……う、うん」
ちょっと不安げに顔を赤くしながら返事をするヒナに僕はもう一度キスをした。
大好きだよ
溢れる思いを全部受け止めて