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【松】猫と六つ子

第12章 あざとさを力に



カフェから出て、ヒナちゃんがお手洗いに行っている間。
ふとモールのほうを見る。
リア充ばっかだな……なんだかんだいって実際家にいる時間が一番ホッとするのは僕もクズだからだろう。
あんまり認めたくはないけどね。



「あれー?トッティじゃん」

モールから出てきた女の子二人に声をかけられた。
この前、合コンした子達だ……
一人は僕のことをなし男と呼んだ子だ。

「や、やあ……」

「こんなとこで何してんのー?あっそうだっ」

彼女たちはコソコソと耳打ちをする。
なんか嫌な感じだなー。

「今日夜、飲み会あるんだけどぉ~
男の子一人つかまらなくってぇ、トッティこない?」

クスクスと笑いながら誘われる。
なんなの?どうせ、数合わせなんでしょ……



彼女たちの誘いを断ろうとしたとき、後ろから突然柔らかい感触に腕が包まれた。

「トド松♪おまたせっ」

僕が驚いて振り返ると、ヒナちゃんがニコッと眩しいくらいの笑顔を僕に見せた。

「あ、ううん。全然待ってないよ」

「行こっか?」

ヒナちゃんは彼女たちには目もくれず、僕を引っ張り連れて歩いた。
しばらく歩くとヒナちゃんは腕から離れ、僕のほうを向きなおした。

「……飲み会行きたかった?」

「え?ううん、断ろうとしたんだけど」

「そう……
トド松!あの子たちと連絡とるのやめなよ?!」

「……え……?」

「すっごい無理して笑ってたよ?
私、トド松にそんな顔して欲しくない」

真剣に僕のことを見つめる目をみて、僕は心臓がギュッとなった。
なんなのかな……この子。
ヒナちゃんはまるで僕のことを全部知ってるかのようだ。
でも、それがすごく嬉しい僕がいる。
こんなのってないや……



「……ヒナちゃん、ありがとう。
急に僕の名前呼び捨てするから、ちょっとドキドキしちゃった」

「あっ!やだ、ごめん!
思わずでちゃって……」

「ううん、嬉しかった♪」

「そ、そう?じゃあ飲み会なんて忘れて、私と遊ぼ♪」

「喜んで♪お姫様」
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