第54章 ちっちゃな君と僕 逆ハー
<一松side>
俺は部屋でのんびりと猫雑誌を読む。
「よしっ!取ってこいっ!」
「ぶにゃ~っ」
スーパーボールを手にポーンっ!と投げ、猫に取りに行かせるヒナ。
猫も意外や意外。ちゃんとくわえて持って帰ってくる。
「よぉーしっ!いい子♪」
ナデナデと猫を愛でるヒナ。猫は嬉しそうにゴロゴロ喉を鳴らしながら、舌でヒナを舐めた。
「わっ!」
猫の勢いに負けてゴロンと転がる。
はたから見ると猫に食われているようにしか見えねぇな……
「にゃー」
猫は飽きたのか、窓から外へ出ていった。
ゴロンと寝転がったまま、俺の顔を覗くヒナ。
「……何?」
「んーん……お水貰っていい?」
コップに水を入れて近くに置くと、ヒナは手や顔を洗った。
俺は濡れたヒナの身体を勝手に拭く。
何だよ?別にいいだろ?
「ありがと、一松」
「ん……」
「ね、もしさ……博士の薬も効かなくて、ずーっとずーっとこの姿だったら、どうする?」
「どうするって……どうにもできねーんじゃね?」
「そ、そうなんだけどさ……
い、一松は私のこと捨てない?」
「捨てるって……何……」
おずおずと遠慮がちに聞いてくるヒナ。
俺がこんな姿のこいつを捨てるようなゴミクズに見えんのか?
「だって、戻らなかったら、ずーっとおばあちゃんになるまでずーっとこのサイズだよ?」
「……別にいいんじゃね?
ずーっとずーっとずーっと……俺のポケットにでもはいってろよ。俺が干からびるまで入ってろ」
「一松が干からびるの?」
「ああ、俺みたいなゴミはお前の面倒しかみないから、気づいたら自分が先に干からびてるはず」
「ええ~?そんな死にかた嫌だよ?」
「……んじゃ頑張って戻ることだね」
フフンと鼻で笑うとヒナは何でそうなるのかと疑問の顔をする。
俺は自分の面倒よりもお前の面倒みられたらそれでいいの。捨てたりするわけない。
まぁそこまで言わないけどさ……
そんなこと考えながらヒナに触れるようなキスをした。