第9章 喧嘩して仲直り
「ヒナ!猫になる薬とかは?!」
小声で一松に言われ、私はチャームを慌てて確認する。
チャームは開いたまま私の首にぶら下がっている。
「あっ!さっき急いで薬出したからソファーに落としたかも……」
それを聞いてサーッと顔が青くなった一松が、舌打ちをしながら人間のままの私をガバッと抱き上げ、押し入れに放り投げた。
バシーンッ!と押し入れの戸を閉められたと同時に、階段からの襖が開く音がする。
「あれ?一松だけ?今、誰かと話してなかった?」
声の主はチョロ松だ。
「……ひ、一人ですけど……?」
「なんで窓も閉まってるの?暑苦しくない?」
ガラッと窓を開ける音がする。
「ねぇ、押入れの荷物出したいんだけど、一松どいてくれない?」
「……む、無理」
「えー?なんでだよ。
そういえば入ってくるとき押入れの戸すごい勢いで閉めたよね?何してたの?」
「何って……ナニだよ」
「なに?」
「ナニをしてたんで!まだ片付けてないんで!
チョロ松兄さんちょっと下で待っててくんない?」
「ええーっ?!なんだよ、まじで?
はぁ……まぁそれならしょうがないか、すぐ片付けろよ」
階段を降りる音がして、少し待っていると押し入れの戸を開けられる。
押し入れの前にはまだ顔が真っ赤の一松が立っていた。
「……ナニってなに?」
そう聞く私に深いため息をついて一松は私に薬を見せる。
「薬、これ?」
「うん、ありがとう!」
私が薬をもらおうと手を出すと、一松は薬を持った手を引っ込める。
「薬をください、一松様……、って言え!」
どうやら一松はさっき抱きついたことを根に持っているようだ。
「薬をください、一松様……ねぇナニってなに?」
一松はガッと私の頬を掴み、口に薬を放り込んだ。
「……お前は一生知らなくていい」
猫になった私を一松は抱き上げ、また深くため息をつくのだった。