第42章 君に捧げる 【一松 カラ松】
<ヒナside>
夜、照明で照らされた庭園を見ながら少し酔った身体を冷ました。
ここからでも家は見える。
あそこは私のケージだ。戻ったら二度と……
いや、やめとこう。
考えても何もならない。
「レディ」
ふわりと肩にストールを掛けられ、振り向くとカラ松がいた。
「ありがとう……」
お礼を言うとニコリと笑ったカラ松。その顔を見て、私は心が軽くなる。
さっきまで一緒に騒いでいたのにね?
「夜空を見てたのか?
ビューティフルだな」
「空も綺麗だね。
でも、ほら……庭が綺麗で見てたの」
「本当だ。
……よし、見に行こうっ!
俺と夜のデートしようか♪」
「今から?」
「もちろんだ!レディ。
美しいものは近くで見ないとな?」
カラ松はご機嫌だ。
私をエスコートしながら、一緒に外へ出た。
二人の歩くカラカラと下駄の音だけ庭に響く。
「夜は、やっぱり冷えるね」
「ああ……冷えるな。
もっとそばに寄って…いいんだぜ?」
そう言って、カラ松はグイッっと自分の羽織で私を隠すように引き寄せる。
ちょ、ちょっと歩きにくいかな……
それでも、カラ松の心臓の音が早く打っていることに気づき、私も変に緊張してきた。
「き、昨日はだなっ!」
「うん」
「ほ、ほら蔵で……してくれただろ?」
「うん?」
「……なっ?」
「えーと……
あっ!猫、可愛かったぁ~
みんな色が違ってすぐわかったし。
カラ猫ったら眉毛がキリッてしてて……もーっ可愛すぎっ!
また見せてね?」
「そ、それはいいんだがっ!
そのあとだっ!わかるだろ?ん~っ?」
「えー?
そのあと……お母さんにも兄さんにもバシッ!と言って決めてきたよ!」
「そ、そうじゃあ……なくてだなぁ……」
「ふふっ」
もどかしそうにしてるカラ松。
もうっほんと可愛いなぁ……
「レディ……俺をからかってるだろ?」
「うんっ♪」