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【松】猫と六つ子

第41章 君に捧げる 【おそ松 チョロ松】


<ヒナside>

私は旅館内をぶらぶらと歩いていた。
石が敷き詰められた散歩道を歩きながら、落ち葉を見つめる。
ひんやりとした風が気持ちいい。
んー……誰か誘えばよかった。



旅館の玄関先で従業員の人が何か抱えて出ていこうとしているのを見かける。
あれっ!?あれは……!

「すみませんっ!!!」

「えっ?未木様!?」

「その子、うちの子なんです」

従業員が抱えていたのは緑色の猫。

「そうですか、てっきり迷い込んだかと。
あ、あの……未木様」

「はい?」

「お、お見合いはどうなりましたか?」

「あー……
全部断りました」

ていうか、家出たからよくわからないけど。



「そ、そうなんですかっ!?
じゃ、じゃあ、よかったら、その……
うわぁっ!!!」

従業員に抱かれていたチョロくんはピョンッと従業員を蹴り飛ばして私の胸に飛び込んできた。
チョロ猫きたぁー!

「ご、ごめんなさい!大丈夫ですか?
チョロくん、お散歩しよ♪」

私はウキウキしながら従業員の人と別れて、散歩道へ戻った。



あったかーい♪
スリスリ抱き締めて散歩を続ける。
チョロくんは困った顔をしながら、私にされるがままだ。
普段してる側がされてるとどんな気分なのかな?



すると……
突然、チョロ松が元の姿に戻る。

「わっ!!!
わっ、わわっ……」

急に手元が重くなってふらつく。

「ヒナちゃん!!!」

ひっくり返りそうになった私をチョロくんは倒れそうになりながら、私の身体を支えた。

「び、びっくりした……」

「セ、セーフだね。ケガない?」

「う、うん」

道端で抱き締めてられてることには変わりないけど……



普段、私が急に元に戻っても、誰一人と落とすことのない六つ子。
それが当たり前じゃないことに私は今頃気づいた。
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