第40章 君に捧げる 【トド松 十四松】
<ヒナside>
私は旅館の温泉に入りにきた。
まだ昼間なので、お客は私たちくらいしかいないようだ。
突き刺さる視線にウンザリする。
「おっじゃまっしまーっす!」
「えっ?」
ギョッと振り返るとトド松がタオル一枚の姿で入ってきた。
堂々と内湯をして、私のいる湯船に入り込んできた。
「あー!
ちゃんとお湯の中でもタオル巻いちゃって……
ほんとはタオルを入れちゃダメでしょ?」
「それは、みんなが一緒に入るって駄々こねてたから……って!
何、普通に入ってきてるの!?」
「普通じゃないよっ!
兄さん達にバレないようにあちこち遠回りして、しっかり貸し切りの予約入れて札もちゃんと替えてきたしっ!」
「なんか噛み合ってなくない!?」
「それに……ほら、普通なんかじゃないよ?」
そう言って私の手を掴み、自分の胸に私の手の平を当てさせる。
驚くほどに早鐘を打っているトド松の心臓に私の手も震えた気がした。
「ヒナちゃんが誰にするか決めるまで待つよ?
……でも、僕ちゃんと告白したいしっ!
ちゃんと二人で話がしたくてっ!」
いつもとは違う真剣な顔で私を見つめるトド松。
私の手を掴んでいる手が震えている。
触れているところが熱い。
こんな風に強引に堂々としているトド松の姿を見るのは初めてかもしれない。
私はキュッと胸が苦しくなった。
「僕、君を好きだよ。
初めて会ったときから笑った顔が好きだ。
サラサラの髪も好き。
本当は毎日触りたいくらい好き。
寝てるときも話してる声も全部好きっ!
大好きだっ!」
「トド松……」