第38章 ずっと一緒に 中編
<カラ松side>
俺達六人はイヤミに運転させ、ヒナの住んでいた町へ向かった。
俺の手には一枚の写真……
一松がアパートの部屋の前で拾ったという一枚の写真。
ヒナと俺が写っている写真だ。
写真の中のヒナは俺に向けて、いつもの可愛い笑顔を見せている。
「その写真のカラ松兄さんの顔ヤッバイよねー」
トド松が後ろの座席から覗きこみながら言った。
「んー?何がヤバいんだ?」
「顔に好きですって書いてありそうなくらいデレッデレじゃん?」
「あー確かに……」
「確かにっ!確かに確かにっ!」
「何言ってるザンス?ミーが撮った写真なら、チミたち全員そんな顔ザンスよ?
まぁ、全員同じ顔なんザンスから、どれが誰だかわからないザンスが!」
イヤミが運転しながら、鼻で笑った。
ここ数日前から、イヤミは人に頼まれ俺達の写真を撮っていたらしい。
「チミたちは彼女といるといくら撮っても気づかなくて楽チンだったザンス。
ま、まぁ一人、気づいて堂々とVサインしてた奴はいたザンスけど……」
「あ、それ僕ー!」
アハハーと笑いながら手をあげた十四松。
「十四松、隠し撮りは悪いことだから、今度されたら、ちゃんと言いなさい」
「あい!」
「……着いたザンス」
イヤミの車が止まったのはわりと高級そうな旅館。
予約を取ってくれたのはハタ坊だ。
「ご予約の方でしょうか?」
「あーそうそう!松田でーす」
「ん?チミたち松……グフッ!」
運転席のイヤミを蹴り飛ばし、俺達は車から降りる。
従業員は驚きながらも中へ俺達を招き入れる。
「ま、松田様ですね?
お待ちしておりました。どうぞお入り下さい」
「じゃ、ミーはこれで……」
「イヤミくーん?
帰りに来なかったらわかってるよなぁ?
てか車置いてけ!」
「ぐっ……!クズどもめっ!
ち、ちなみに空いてる部屋はないザンス?」
「申し訳ございません。
しばらく満室になっておりまして……」
「シェッ!?まったく……」
ブツブツと文句を言いながら、イヤミは車から降り、どこかへ出掛けて行った。