第7章 リーブミー
プリントを端から端まで読み、職場体験先を見つける
『うーーん』
「大手の芸能事務所、全部からスカウトきてるじゃん」
さきちゃんが覗き込みながら言う
『正直どこがいいのか分かんないよ』
ここは学食、なるべくすぐ決めるようにとのお達しで
こうして休み時間を潰して選んでいるのだ
「寧々」
名前を呼ばれ、見上げると
『勝己くん!』
「お、旦那さん登場~」
ゆきが茶化すように言う
「お前いいこと言うじゃねーか」
勝己くんが嬉しそうに言う
学食中の視線が集まっているような気がする
多分気のせいじゃない
「そのプリントなんだ?」
勝己くんが椅子の後ろから身を屈めて
実質私の耳の横に顔が来る形で
『あ、職場体験先の候補リスト…』
息づかいまで、聞こえちゃうよ
「は?普通科は職場体験ねーだろ?」
『あ、うん
そうなんだけど…』
なんて説明しようか悩んでいると
「寧々は、普通科にしては異例にスカウトがたくさん来たんですよ」
さきちゃんが説明してくれる
「へぇ、どこ行くか決めたのか?」
『ううん、まだ…っていうか正直どこがいいのか、よく分からなくて』
そう言うと、勝己くんは私からプリントをとって
ペラペラと捲っていく
そして、
「ここにしろ」
『へ?ここって』
勝己くんが指名したのは、大手事務所ハリプロスカウトキャラバン
「ここしか名前知らねーし、
何より俺の職場体験先に近い」
ニヤリと笑う
『そうなんだ』
プリントを受け取り、ハリプロの欄を見る
『うん、ここにするよ
ありがとう、勝己くん』
その場で勝己くんとは別れたんだけど
そういえば、勝己くんはどこのヒーロー事務所に行くのかきいてなかったな