第52章 キスミー
寧々の母親は爆豪を手招いた。
爆豪はバツが悪そうに、寧々のベッドに立ち、寧々に視線を落とす。
「ほら、寧々、爆豪くんきたわよ、
わかるでしょ?爆豪くん…」
その問いかけに、全く微動だにしない瞼
病室内に緊張が走る
「ほら、寧々…爆豪くん…、わかるわよね?」
再度問いかけるも、寧々はただ、爆豪を見つめるだけだった。
ピクリとも動かない寧々に、爆豪はそっと唇を震わせる。
「寧々……」
二人の時だけ、彼女を呼ぶときのような優しい声
だが寧々は爆豪をみつめたまま、
途端
寧々の、静かな瞳から涙がこぼれた。
未だ、その瞳は、決して彼から逸らされないように。
瞬く事さえも、疎ましいと言いたげに
爆豪を見つめたままで
涙を零す。
爆豪はフラフラと寧々にしがみつき、小さな体を抱きしめた。
「寧々……」
頬を伝う涙が熱かった。
胸の中が焼け焦げそうなほど、熱かった。
こんなに好きだ
こんなに好きになってしまった
彼女がいなくては、生きていけないのではと、思うほどに。
細胞の一つ一つが唸りを上げる。
寧々が好きだと、震える。
何か伝えたげに、潤んだ瞳が持ち上がって、目が合った
人工呼吸マスクの中の
唇が、心擡げに、動く
カツキ
キスシテ…ホシイ
と
「あぁ……寧々…
もちろんだ………」