• テキストサイズ

【YOI男主】僕のスーパーヒーロー【勇利&ユーリ】

第4章 僕のスーパーヒーロー


思わぬ衝撃に、勇利は半ば呆気に取られるがままユーリの行為を許してしまっていた。
こんな風に自分を驚かせるキスはどれ位ぶりだろう、と些か間抜けな事を考えそうになっていると、数秒の時を置いてユーリの唇と手が離れる。
自分を真っ直ぐ見つめてくる妙に大人びた眼差しに、らしくもなく勇利は胸を踊らせそうになっていたが、
「…ぷっ」
「?」
「カツ丼。お前、ここに来る前ボルシチ食っただろ?」
直後堪え切れずに笑い出したユーリに、勇利は慌てて片手で口元を押さえた。
「ユリオ!悪戯にも程が…」
「勇利」
再度呼び掛けられて、勇利はユーリを見る。
何処か寂しそうな、それでいて達観したような表情のユーリは、やがてゆっくりと言葉を続けた。
「『僕ハ、勇利のスケート、すき』」
「え…?」
「不思議だよな。お前とのキスよりも、お前と一緒にイーグルで氷のリングを作った時の方が、よっぽどドキドキしたんだ」
くすり、と吐息を漏らしたユーリは、両手を腰に当てた。
「…しゃーねぇわな。俺が自分の気持ちに気付く以前に、お前はハナっからヴィクトルの事しか見てないんだから。それに、初恋は実らねぇともいうし」
「カツ丼もそうだったろ?」と長谷津の優子の事を仄めかされ、勇利は複雑な表情をする。
「でも、さっき言った事は本当だ。俺は、お前のスケートが好きだ。…だからこそ、勝ちたい」
「ユリオ…」
「第一お前、ジジイとの約束でワールド5連覇しないとダメなんだろ?今シーズンは譲ってやるけど、来シーズンからは俺が全部阻止する予定だから、お前ずっと引退できねーぞ?可哀想にな」
「ええ!?」
ユーリにつられて、いつしか勇利も笑い声を上げていた。
2人でひとしきり笑った後、改めて互いに見つめ合う。
「待ってるから」
「おぅ」
左の拳を軽く突き合わせた2人は、今度は声には出さずに笑顔を浮かべた。
「…なあ。もしもお前がヴィクトルと出会ってなかったとして、さっきの状態になったら、どうしてた?」
「何言ってるの、もー」
「だから『もしも』だって。どうせありえねぇんだから、気楽に答えろよ」
重ねて問われた勇利は、無意識に指を唇に当てながら思案する。
「『もしも』そうだったら…多分、今のユリオに夢中になっちゃったかも知れない」
「──残念だったな!」
勇利の返事を聞いたユーリは、心底愉快そうに笑った。
/ 24ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp