第8章 女装編
「やっぱり切り落としましょう。」
「いやぁぁぁあああ!!!!」
「妙さん!待って、待ってくれ。
俺、一応男としてこれからも
生きていく予定なんで、
切り落とすとか無理ですって!!」
「大丈夫よ、澪子ちゃん。
切り落としたソレを売ればかんざし
なんて何本でも買えるわよ。」
「悪徳業者に売らないでよ!!
ほら、若もなんとか言って!」
「…澪。
僕この前のキャバクラで女装したの時から
ずっと考えてたんだ。
なんで他の男は投げ飛ばしてしまうが、
澪だけは例外なんだろうって。
…それで、ふと思ったんだ。
僕、澪の事、男として
見ていないからなんじゃないかって。」
「いやいやいや男ですからぁぁぁ!!!」
店の人も妙さんのオーラに圧倒され
声をかけられないようで、
俺は店の外へとじわじわと後ずさりをする。
しかしそれと同じ距離妙さんが詰め寄ってくる
この雰囲気逃げられない…!
そう思っていた時。
「貸しなせェ。」
妙さんの手にあったかんざしがなくなり、
沖田隊長の手に渡る。
「へェ…良い品じゃねェですかぃ。」
まじまじと蝶のかんざしを見てから
俺の顔と見比べる。
「お、沖田隊長………?」
おそるおそる聞く。
何をするつもりなのだろうか。
彼はサド王子。女装がバレてしまった今、
俺は下手に出るしかないのだが…。
俺の思惑も他所に
意外な答えが返ってくる。
「買ってやりやさァ。」
「へ?」
「だから、買ってやるって言ってんでィ。」
まさか、あのサド王子に手を
差し伸べられるとは思わず聞き返したのだが
本当に買ってくれるようだ。
沖田隊長はかんざしをそのまま
レジに持っていった。
「澪、あの人と仲が良いのか?」
「……ま、まさか。ただの上司だよ…。」
若が心配そうに聞いてくるが、
心配なのは俺も同じだ。
こんなに優しい沖田隊長なんて初めてだ。
明日は雪が降るんじゃないだろうか。