第8章 女装編
「妙ちゃん、これどうかな。」
「あ!かわいいわね。こっちにもあるわ。」
「ほんとうだ。たくさん種類があるな。
どれが似合うだろうか…。」
「……………………はぁ。」
結局、上から下まで着物やら帯やら下駄やら
買わされてしまった。
俺には選ぶ権利は無いくせに、
お金だけ払えなんて本当に調子のいいやつだ。
おかげで財布も心もすっからかん。
憎ましげに店の中を見ると、
2人が楽しそうに
髪飾りを選んでいる。
可愛いものをまんまるな目を凝らして
選ぶ姿はやっぱり女の顔。
…まぁ、若が楽しんでいるならいいか。
「ふぅ…………」
2人を置いて店の外へ出る。
何度も着物を試着したから少し疲れたなぁ…
外は快晴で風も涼しかった。
女物のキャピキャピした雰囲気から
解放され深呼吸をする。
ふと周りを見渡すと見慣れた顔が現れ、
目が合う。
「…………神崎、ですかィ?」
ギクリと肩が揺れる。
………お、沖田隊長…………。
真選組の一番隊長で………
超の付くほどドS野郎…………
もしこの女装がバレたら………
「………あ、………いや、どちら様ですか?」
平然を装い、半笑いをする。
女装の事が知られたら確実に屯所で
言い振り回される。
どうにかして切り抜けなければ。
「シラ切るつもりですかィ?」
沖田隊長の眉間にシワがよる。
いや、シワがよろうが角が生えようが
魔王になろうが関係ない。
「アハハ……なんのことかさっぱり………。」
首を傾げると、後ろから声がする。
「澪子ちゃ〜ん、良いのあったわよー!!」
………………………。
女装バレましたね。これは。
おーい、と手を振り笑う魔王こと妙さんを
他所に俺の気分はどん底だ。
「澪子ちゃん、
ツレが呼んでやすぜ。行きやしょう。」
俺の手を引く沖田隊長は
心なしか嬉しそうだった。