第8章 女装編
(澪視点)
今日は仕事が休みで、若に、一緒に遊びに
行かないかと誘われていた。
若も俺も世間知らずだから、
遊ぶ場所なんて限られているけど、
最近忙しかったからちょっと楽しみだった。
でも、若の一言で事態は一変する。
「妙ちゃんと一緒に遊ぶのが
そんなに嫌なのか?」
「いやだ!いやにきまってるじゃないか!!」
柳生家の俺の部屋でうつ伏せになり
顔を突っ伏して駄々をこねる俺に
若が近くにしゃがむ。
「なんでそんなに嫌なんだ…。
2人とも面識があったから
3人で楽しくお出かけしようと
思っていたのに。」
若が悲しそうにため息をつく。
ごめん、若。若が悪いわけじゃないんだ。
妙さんが悪いんだ。
だって………
「楽しくお出かけって……アレされるに
決まってるじゃん…」
「アレ?」
その時、ガラガラと障子が空き、
笑顔の妙さんが現れた。
「ウフフ、全然来ないから迎えに来ちゃった。
九ちゃん、澪子ちゃん。行きましょう。」
「……う”っ…………………」
「……………。」
「九ちゃんのお家に女の子の服があって
良かったわ。澪子ちゃん、
やっぱり可愛いじゃない。」
「……ああ、女みたいだ。僕なんかより。」
「うぅ……………」
長い髪をポニーテールにして、
赤い花の着物に身を包んだ俺は女になっていた
鏡を見ると嫌そうな顔の女が写る。
それが自分であると認識すると吐き気がした。
仕事で女装するならまだしも、
プライベートで女装だなんてもってのほかだ。
「フフフ…やっぱり私の予想通りね。」
それに対して若も妙さんも楽しそうだ。
興味津々に俺を見る若の目はいやに輝いている
「でもやっぱり赤はイマイチ合わないわね。
澪子ちゃん、出かけましょう。
いい呉服屋さんがあるの。」
「う……妙さん、俺…」
「それとも、切り落とす?」
その言葉に、以前のキャバクラでの事を
思い出す。
「………………行きます。」
「それじゃあ、出発ね。」
妙さんは俺を見てにこりと笑った。