第7章 高杉との決別(注:R15)
ミツバ編から少し経ったある日のこと。
仕事が終わって帰ってきた俺の足元に
トンと矢が刺さる。
「……………。」
今時矢に手紙をつけて送るなんて、
古風な事する奴は一人しかいない。
「………晋助?」
矢を取って手紙を開くと、
やはり、晋助のようだ。
『今夜、迎えに行く。』
の1行だけ書かれた手紙。
そういえば、真選組に入ってから会っていない
小太郎同様色々問い詰められそうだと
思いながら準備のために柳生家の門をくぐった
夜も更けて、月が光り輝き
俺達の道を照らす頃。
柳生家入口の階段の下で待っていると
傘をかぶった派手な着物の男が現れる。
「久しいな、澪。」
傘を上げてこちらを見る片眼は
黒く濁っていてぞくりと鳥肌が立つ。
「ククッ…行こうぜ。」
何も変わらない素振りを見せる晋助。
ただ、ひとつ違うのは、瞳の濁り。
直感で逃げ出した方がいいと
頭が指令を出している。
嫌な予感、それが頭にひたすら
過ぎっているのだ。
…俺はそれを振り払った。
晋助は友人だ。何を疑っているんだ、俺は。
俺は首をぶるぶる振って晋助の後を追った。
良い店の最上階で夕飯を食べ
酒を呑み呑まされ頭はフラフラ、
体もフラフラだ。
晋助の行く店はいつも美味しい居酒屋で、
しかもお忍びで行くようなところばかり。
こんな所、高いだろうに、
晋助はいつも奢ってくれる。
俺にはサイフすら出させない。
晋助に肩を支えられながら
店からよたよたと出た。
「ご、ごちそーさまでふ。」
喋ると酒が舞い上がってきそうになる。
俺は慌てて口の中のモノを
無理やり胃に押し込んだ。
「……あァ。」
俺がフラフラなのをわかってるのか
肩を貸してくれる晋助はやっぱり優しい。