第6章 ミツバ編(原作沿い)
「…………まぁ、若からの情報ですが、
上様、楽しんでたみたいですよ。キャバクラ」
「冗談やめてくれ。
俺ァ上様が全てをさらけ出して
江戸のスナック街を走る所を見るだけで
寿命が3年は縮んだぜ。」
「ふふ…違いないです。」
将軍キャバクラ事件から1ヶ月後、
戦艦と戦うキャバ嬢と、全裸の征夷大将軍が
街中の至る所で目撃されるという
騒動も収まりつつあった。
…もっとも、俺はそんな事には気付かず
飯食ってただけだけどさ。
「まぁその件はいい。」
副長が煙草をふかす。
俺が副長に呼び出されたのは数分前で、
こういう時はおそらく、
何か極秘で頼みたいことがあるのだ。
「…神崎、転海屋って知ってるか。」
「聞いたことはあります。」
転海屋といえば、表向きは
運送業の企業。運搬船が主な商売だ。
しかし最近攘夷志士が近くで
ちらほら見られるという噂もある。
その噂の元は小太郎だが、
そんなに深くは調べていないようだ。
とはいえ、真選組として
こんな案件逃がすわけには行かない。
…話が見えてきたな。
「例えば…攘夷志士とのつながり、とか?」
「ククッ…やっぱりてめぇも掴んでたか。」
副長がにやりと笑う。
ただ、攘夷志士が出入りしていたからと言って
何かしらの取引があるわけではない。
「でも、噂程度ですし、
何か見つかったわけじゃ…」
俺がつぶやくと、目の前に
写真が何枚か投げ出される。
「………、これは…」
写真を見ると、転海屋の蔵場当馬が
攘夷志士と会話していた。
そしてその別の写真には…………
「なるほど…怪しいですね。」
大量な刀や銃などの武器だった。
つまり、武器の密輸と違法取引ということが
考えられる。
ただ、二枚の写真が同じ場所で取られたという
証拠はない。
「この写真じゃまだ弱ェ。
もっと徹底的な証拠が欲しい。」
写真をまじまじと見る俺を他所に、
二本目の煙草に火をつける。
「神崎はこの組織に潜入して
もっと徹底的なモンを掴んできてほしい。」
「もし掴めたら?」
「取引の日を山崎を通して伝えろ。奴を潰す」
「了解。」
転海屋……か。
なんだか胸騒ぎがする。
妙な事、怒らなければいいけど。