第4章 再就職編
「………で、元攘夷志士って事は
桂や高杉とも面識あるのか?」
近藤さんが履歴書をまじまじと読む。
総悟もとっつぁんも席に戻り、
背もたれによりかかる。
「勿論。戦友だったよ。」
「だった……、今は違うってわけか。」
「うん。まぁね。
戦争なんて、もうこりごり。」
肩を下げて俺達から目をそらす神崎の目は
遠くを見ていた。
「でも、それがあったから
柳生家にも出会えた。
だから、後悔はしてないかな。」
成程…学歴を見るかぎり、
柳生家との接点はない。
何かしらの出会いがあったのだろう。
それにしても、何故柳生家の御庭番が
俺達の依頼を受けたのかは謎だ。
「…じゃあ柳生家との関係はどうなってる。
テメー、差し金じゃねぇだろうな?」
こんな質問で簡単に答えるかは分からないが、
一応ふっかけてみる。
もしかして裏があるかもしれねぇしな…。
柳生家は昔、幕府に仕えていたほどの
でっけぇ道場だ。
…俺達真選組が出来るまではの話だが。
俺達が江戸に来てから見限られたものの、
今も門下生や地位を保っている。
つまりはというと、地位は保っているだけで
全盛期ほどではない。
俺達を潰して乗っ取ろうとしてる可能性もある
奴の顔が、やるせない顔から
一点、緊張感のある真剣な表情になり、
それが部屋全体に伝わった。
「愚問だね。柳生家とお宅らとは無関係。
柳生家は恩深き居場所。
お宅らはたまたまご縁があっただけの話。
差し金だなんて言い方は柳生家に失礼だ。
取り下げてもらいたい。」
奴の眼は俺達を通り越して、
別の人物を見ているようだった。
その柳生家に対する忠誠たる態度は
先ほどのおちゃらけた様子とは全く違う。
まるで別人で、
俺も、そうか、としか言えなかった。