第4章 再就職編
(九兵衛視点)
「澪…君には失望したよ。」
「…………。」
「これからも君には柳生家で
御庭番長として力を発揮して
もらいたかったのだがね。」
「申し訳…ありません。」
「では、神崎澪。
今日をもって君は柳生家を………」
「ああ、もう、時間が無いじゃないか!
クソッ…こんな時、澪がいてくれたら…。
僕は、僕はどうしたら………」
僕の名は柳生九兵衛。柳生家の次期当主だ。
柳生家のおぼっちゃまと言えるこの僕だが
今はそれどころではない。
大事な部下…澪が、僕のせいで
柳生家を去ろうとしているのだ。
妙ちゃんに付いていてくれと言ったのは僕だ
澪はその命に従っただけであって
澪のせいじゃない。
なのに、澪はそれを自分のせいだと言って
辞表を出したらしい。
家で起こった事件以来
澪は僕の前に姿を現していない。
何度呼んでも出てこない違和感だけが
僕の胸にこだましている。
よく考えたら澪にしてもらっていたことも
多かった。僕は当たり前に
それを受け入れていたけど、
澪のお陰で僕は無駄なく動けていた事を知った
いなくなってから気付くなんて、
僕はなんて馬鹿なんだろう。
「澪………」
いや、迷っている時間はない。
もうすぐ澪にどう処罰を与えるかの会合が
始まる。
父上は澪の事を許していないから
澪には厳しい罰を与えるだろう。
「やはり父上に直談判するしかないか…」
考えに考えたが、それしか浮かばない。
父上に会いに行こうとすると、
東城が僕を止めた。
「お待ちください、若。」
「どいてくれ東城。僕は今忙しいんだ。」
「輿矩様にお会いするおつもりなのでしょう?
無駄だからおやめなさい。」
「…………ッ」
東城は僕が生まれたときからいる付き人だ。
過保護でムカつくが、今回ばかりは
図星だ。僕は言いたい言葉を飲み込んだ。