第21章 鬼兵隊編
その時、ガラガラと障子が開く。
皆落としていた顔を上げ、
開いた障子の方を向く。
「………新八君!」
そこには、
チャイナ娘と眼鏡が、眉を下げて立っていた。
どうやら、銀髪は不在らしい。
「何しに来た?」
「……………。」
近藤さんの問いに、二人とも口を噤んだ。
チャイナ娘が先に、ヅカヅカと部屋に入る。
遅れて、眼鏡の坊主も部屋に入った。
敏木斎の前に立ったチャイナ娘が
握りしめていた紙切れを手渡した。
「……手紙を届けに来たアル。」
「………?誰からじゃ。」
「澪からアル。」
その名前に全員が目を丸くした。
「………澪は自分を探すなって、
言いたいのか?」
手紙を読み終わった後、
九兵衛がぼそりと呟いた。
「そう…みたいです。
銀さんも手を引くって言ってましたし…。」
九兵衛の言葉に眼鏡が肩を落として言う。
チャイナ娘も目を伏せた。
「…なら、俺達も手を引けってかィ?」
隣に座る総悟が薄ら笑いを浮かべる。
口角は上がっているが、目は笑っていない。
「そんなメモ書き、嘘っぱちかも
知れねぇだろィ。」
「だが、これは確かに澪の字だ。」
「そんなの書かされたかもしれねェでさァ。」
総悟は至極納得いかないらしい。
近藤さんの言葉も届かず、
ギチギチと怒り混じりに言葉を紡いでいる。
「…おじい様、このメモから
場所を特定することって出来ないのですか?
何か、澪の場所の手がかりは……。」
九兵衛は縋るように敏木斎に声をかけた。
敏木斎は澪からの手紙を手に取り、
目を伏せた。
「……捜索届を取り下げる。」
「…………なっ!?」
九兵衛が目を丸くして声を上げ、
皆の目がそちらへ向く。
勿論、俺達もだ。
俺達はあくまで、柳生敏木斎からの捜索願で
澪を捜索している。
それを取り下げるとなると、
澪を探す必要はないと
言っているようなものだった。
「オイ、どういうことだ。」
俺がそう言うと
敏木斎は澪の手紙を
4つ折りにして懐にしまった。
「手紙の通りにするんじゃ。それが良い。
ワシらも、おぬしらも。」