第20章 春雨編 (注:R18 本番なし)
「………はぁ…ーーーッ」
神威が深いため息をつく。
今日は俺に飲ませないつもりだったようだ。
直前で引き抜くと
思い切り顔にかけられる。
液体が頬を垂れ、顎から床に落ちた。
「………はぁ、澪。イイ顔。」
「そりゃどうも。今日は何点?」
「…んー、75点くらいかな。」
「…厳しいな。汚れ損じゃん。」
「フフ……じゃあ、また明日。」
神威はご機嫌で部屋を出ていく。
それ以外の時間は、
看守の憂さ晴らしに多少殴られる程度で
特に何もされない。
食事は、ものすごく貧相で
正直口淫をやる前の水が
俺がちゃんと生きていられる理由だと思う。
食事は好きだけど、
別に食べなくたって人間生きられるものだ。
俺が食欲旺盛じゃなくて良かったと思う。
「…………………はぁ、拭くか。」
ティッシュなんてないから、
着ている着流しで液体を拭う。
着流しは臭くなるが仕方ない。
「………はぁー…」
固いベットに横たわる。
本当は物凄く暇だから、
もう首輪も手錠も自分で外せるし
いつだって抜け出せる。
本当は家に帰りたいけど、
なんとなく神威を見捨てる事は出来なかった。
「…昔の……俺に似てるかも…。」
多分、それが見捨てられない理由だ。
神威は、昔の俺に。
先生に会う前の俺に少し似ていた。
神威にとっては味方も敵も関係ない。
殺ろうと思ったら、
きっと家族ですら刃を向けるだろう。
俺も、昔はそうだった。
上司に、雇い主に言われれば
その通り動いた。
そこに俺の感情は存在しない。
神威と俺が違うのは、
神威はその指示を自分で行ってる事くらいだ。