第17章 呼び名編
「はいはい、喧嘩は
そこまでにしてください。
沖田隊長も副長も終わりです。」
俺達の睨み合いの間に入り、
手を叩いて俺達の気を逸らしたのは
神崎だった。
それより、今………。
「は?…今、お前。」
「沖田隊長、申し訳ありませんが
喧嘩を起こすんだったら
名前呼びはナシです。」
ギロリと神崎は総悟を睨む。
総悟は思いもよらない結末に
冷や汗を垂らした。ざまぁみろ。
「…まぁ、俺の事はなんて
呼んでもらっても構いませんが。
副長も喧嘩するなら
俺の事名前呼びでもいいですよ、
気にしないので。」
「あ、あぁ……分かった。」
神崎……いや、澪の気迫に
思わずそのまま頷いた。
ドライバー事件で局長をやらせてから、
サボっていたり間違いを犯した隊士達にも
このように叱責する姿をよく見かけていた。
しかし、それは普通の隊士だけの話で、
俺や総悟みたいな上の人間は
そこまでじゃないと思っていた。
しかし、実際受けてみると
何も言い返せない圧力に頷くしかない。
「はぁ…これで五分五分になりました。
気は済んだでしょう?
全く……大の大人が人の呼び名で
喧嘩だなんて……はぁ。」
澪は頭を抱えて呆れている。
………こんなけ目の前で
お前の事で喧嘩してても
気付かねェお前にも呆れるがな……。
「はい、では解散です。
沖田隊長はその書類今すぐ
書き直してください。いいですね?」
「…………………。」
「…返事は?」
「…へ…へい……。」
あの総悟ですら丸め込まれている所を見ると
やはり澪には
上司というか、人の上に立つ才能があると思う
……ただの惚れた弱みなのかもしれねぇけど。
「副長もこの前の住宅破損の始末書の報告、
上がってきてないですよ。
ちゃんとやってるんですか?」
「…ああ、わ、悪い。今日中に持ってく。」
「ならさっさとやってきてください。
はい。行った行った!」
澪に尻を叩かれるように
俺達は渋々自室に戻った。
……結果的に、総悟は損をして
俺は得をしたのだから、ヨシとするか。